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392 名前: タイトル考案中 仮@ [sage] 投稿日: 2006/06/04(日) 21:07:05 ID:IvNjq++u
「あの、母を……母を見ませんでしたか?先程まであなた方を先導していた女性を」
 エムゥは流民たちに尋ねて回る。しかし、彼らは疲れ切った表情で教団からの
配給を食むのみでそれどころではない様子だ。
 エムゥは天を仰ぐ。数年ぶりに、奇跡のような偶然で母と再会できたのに、
母はまた姿を消してしまった。
 抱擁と涙の余韻はまだこの体にはっきりと残っている。国同士の戦が続き、
人が互いに傷つけあう時代に、心の置き所を無くしかけていた自分を
「あなたが求める物を探しなさい。神は必ず見て下さってるわ」と送り出して
くれた母。渡された金は底をつき、やっと辿り着いたこの岩の谷の村で、
求める物に通ずる教えを得たのも、そして幼いながら谷を守る衛兵のような
役目を頂いたのも、すべて母のおかげだと思っている。
 母がここに来た以上、故郷はやはり戦火に巻き込まれたのだろう。だが、
流民となった者たちを救うため、地位や財産を捨てて、襤褸を纏いこの地に
現れた母はやはり、凛として美しかった。
「ああ、若い方……」
 声のした方向をエムゥは見る。老女が弱々しく、しかししっかりとエムゥを
見つめながら言った。
「あなたの探してる女性は、さっきここの教団の方たちと共にどこかへ向かいました」
 老女はやがて、手を合わせ涙を流し始めた。
「あの女性がいなければ私たちは、きっと野垂れ死にしていた事でしょう。まるで聖母のような働きで……」
 言葉はやがて嗚咽と祈りに変わった。エムゥは老女に深く頭を下げ、同じ
ように祈りを捧げながら老女の指先が向けられた道に歩み出す。
 ああ、やはり感謝しても感謝し尽くす事はない。ならば母と心ゆくまで語り
合いたい。互いのこれまでの苦難、揺るぎない信仰への思い、そして誰もが
争いなく平等であれと諭す、この村の教えを。
641 名前: タイトル考案中 仮A [sage] 投稿日: 2006/06/16(金) 23:46:48 ID:mhTi05Mc
 道は、エムゥが住み暮らす教会へと続いていた。谷の奥の奥、岩壁の洞窟に
煉瓦積みの建物を付随させたその教会。始祖の人物が、異教だと迫害を受けた
のち辿り着き、しかしやはり理想を求め洞窟でただ1人祈り始めた場所。エムゥの
ようにその教えに感銘を受けこの暗く不便な谷に住み始める人々も少なからず
いた。
 エムゥは母にも、そうなって欲しいと願っている。始祖から数えて3代目で
あるという今の教師 デトバは、母を温かく迎えてくれるはずだ、と。村に
辿り着いたとたん倒れ気を失ったエムゥを保護したのは彼の妻 ダマイであり、
なんの見返りも求めずここに住むのを許したのはデトバだった。自分の他にも
同じように救われた人々を幾人か見ているエムゥは母に、ここでしばらく自分と
一緒に暮らし、心安らいだのちこの谷の村の教えを自分と共に故郷に広めて
欲しかった。
 教会の扉。ここもまた朽ちた板切れを組み合わせただけの粗末な扉だった。
エムゥはその扉を、ゆっくりとノックする。
「……あの、申し訳ありません」
 そう呼びかけ、しばらく中の様子をうかがう。母がここにいるかどうか確か
ではないが、村の中心であるこの場所に母の事を知らせるだけでもエムゥには
意味があった。
「なにか」
 扉が少し開く。そこから顔を出したのは、デトバの下に仕える男 ザッラ。
デトバの教えを文字に記す仕事と共に、ボディーガードのような事もしている。
「エムゥか……どうした?」
「あ、あの、ザッラさま。こちらに、その、女性が……」
 しっかりと母の事を尋ねようとした時、ザッラの顔が扉の向こうに引っ込んだ。

642 名前: タイトル考案中 仮B [sage] 投稿日: 2006/06/16(金) 23:47:36 ID:mhTi05Mc
「あの……!」
 戸惑うエムゥの前に再び顔を出したのは、ザッラではなかった。
「ごめんなさいね、エムゥ。どうかしたの?」
 ダマイだった。心優しき、この村の母というべき女性。顔立ちは美しいが、
村に来たのちに発症した熱病により左半身が不自由となった。しかし、そんな
折も夫であるデトバはつきっきりで看病したという。村に暮らすものにとっては
美談のようなものであった。
「ダマイさま。こ、こちらに女性が訪ねて来ませんでしたか?」
「……女性?」
「はい」
「……ああ、紺のショールの来た女性ね。来たわよ、ここへ」
 エムゥは喜ぶ。確かに母は紺のショールを身に着けていた。その他の衣服は
みずぼらしかったが、その紺のショールが母の凛とした美しさを象徴していた。
「でもねエムゥ。その女性ならここへ到着の報告と食事の感謝を告げて、また
皆さんの元へ戻ったはずよ」
 しかし続いたダマイの言葉に、エムゥは落胆する。母に会えそうだったのに、
また姿が遠のいてしまった。
「そう、ですか……失礼しました」
「いいえ。神のご加護を」
 扉は軋みながらゆっくりと閉じられた。エムゥはうなだれ、目を閉じ、しかし
また丘のほうへと歩き始めた。とにかく、母を捜さなければいけない。たった
2、3交わした言葉では、母と自分の空虚を埋める事はできない。話したい。
話したい。話したい。
 次第に力強くなってくる足取り。エムゥは祈りを呟きながら、母の面影を追って
いた。谷を上がり終えるまで、もう少しだった。

 谷底から吹いた強い風が、エムゥの体を後ろから押す。吹き抜けたあと、
何かが足元に絡みついた。母に会うための歩を邪魔されたくない。振り払おうと
したエムゥは、驚愕した。
 あの紺のショールだった。谷底から、教会のほうから吹き上がってきた風に
飛ばされた、母のショール。
85 名前: タイトル考案中 仮C 投稿日: 2006/07/13(木) 02:51:05 ID:zzgXysM3
 足先は、すぐ谷底のほうに向かった。つい先程教会で感じた違和感を、
信心で覆い隠そうとしていた心情は、母のショールを見て掻き消えた。
 前のめりで転げそうになる体を必死に抑え、エムゥは坂を駆け下りる。
沸き上がってくる不安は、口の中で母を連呼することで忘れようとした。
しかしやはり、それは無理なことだった。

 荒い息を抑えきれぬまま、エムゥは再び教会の前に立った。
そのまま戸をノックしようとして、握った手が止まる。あれほど尊敬
できていたザッラやダマイの顔を再び見たとしても、もはや母の消息を
尋ねられないだろう。
 エムゥはその場所から岩壁を仰ぎ見る。教会の元となったものよりは
小さいが、そこにはいくつもの小さな洞窟が穿たれている。誰かの噂話で、
このどれかが教会につながっていると聞いた。エムゥは、それを信じた。


86 名前: タイトル考案中 仮C [sage] 投稿日: 2006/07/13(木) 02:54:11 ID:zzgXysM3


「脱ぎなさい。着ている物全部。これはさっきから何度も言ってるはずよね」
 暗い部屋で、その声はナイフのように鋭く響く。背後からいかつい男の
両腕に拘束されている状態なら、尚更だ。
「……この村では、よそ者は特に警戒しなければならないの。特にエヘラムタの
ほうから来た人たちは……住んでいたなら、分かるでしょう?」
 迫害された幾多の新宗教。迫害した権力者。弾圧。報復。暗殺。政変……
自分が暮らし、そして夫や財産を失った都市は、確かにそういう場所だった。
だが、しかし。
「だから、脱ぎなさい。嫌なら、後ろの男に無理矢理させてもかまわないのよ?」
 同じ性であるはずなのに、目の前の女は特に感情も含まぬまま、裸になれと
命じている。理由はかろうじて理解できたが、やはり素直には受け入れられずに
いた。
「ふうん……時間がないの。ザッラ、脱がしてさし上げなさい。その美しい
ご婦人の着物を」
「は」
 言うが早いか、男の腕はその女の、エムゥの母であるヌエトの砂嵐で擦れた
衣服を掴み、剥いだ。
 躰を捩る暇もなく、巻きつけてあるだけの布は破れ去った。慌てて押さえた
前部の布が、かろうじて胸と股間を隠すのみ。
87 名前: タイトル考案中 仮C [sage] 投稿日: 2006/07/13(木) 02:56:26 ID:zzgXysM3
「へえ……」
「ほお……」
 ほぼ同時にその小さな声は上がった。特に後ろの男のため息は、
ヌエトの首筋を直接撫でる。
「なあにザッラ。そんなに後ろ姿が美しいの?」
「ええ、まあ」
 2人が交わす軽口は、剥かれたヌエトにとって恐怖そのものだった。
震える両手で最後の布を守るのに必死だった。
「残念ね、前からはまだ全部が見えないのよ……さあ、手を離しなさいな」
「いや……いやです……」
「……さっきね」
 冷たい笑いを浮かべ、女は。
「あなたの息子がここに来たわ。『母はいませんか』ってね」
「……!」
88 名前: タイトル考案中 仮C [sage] 投稿日: 2006/07/13(木) 02:57:21 ID:zzgXysM3
「あなたの息子は、そこにいるザッラの下で衛兵の訓練を受けているわ。
だから……あなたの息子に調べてもらおうかしら、あなたの躰の隅々を。
ねえ、いい勉強になると思わない?」
「ああ……っ」
 敗北を悟った吐息が、ヌエトの形よい唇から漏れる。こんな惨めな姿を、
幼き息子に見せることなどできるわけがない。
「……ぬ、脱ぎます。だから、息子には……」
「いいわ。さあ、さっさとその布切れをザッラに渡しなさい」
 女の命令に、ヌエトはまず股間を押さえていた左手の力を抜く。僅かな風が
吹いてもその場所を晒すことになるが、もはやあまり意味のない逡巡だった。
すぐに右手の力も抜かねばならなかったからだ。
「脱ぎ、ました……ああっ!」
 右手の先の布は、ザッラという名の男に渡された。肌を空気に晒す感触が、
ヌエトの恥辱を煽る。激しかった砂嵐よりも、ずっとつらい。
「あはは」
 落ち着いた女の顔からは想像もつかないほどの軽い笑い声。そして。
「毛むくじゃらね、あなた。ザッラ、その下品な毛を見てごらんなさいな」
 ヌエトの全身が、一瞬で紅潮した。

165 名前: タイトル考案中 仮D [sage] 投稿日: 2006/07/17(月) 00:02:54 ID:BIWvgpyD
「残念だわ、難民たちに女神だなんて呼ばれてるあなたが、そんな下の毛だなんて。
いっそ剃ってしまえばいいのに」
 戦火に追われていなかった時期には、確かに処理できていた。しかし逃げ出した
場所も辿り着いた場所も、決して安寧ではない。追われた民が集うといわれる
この谷の住人であるはずなのに、笑みさえ浮かべながら殊更に恥辱を煽る女。
「ひど、い……」
「お許しがあれば私も一度拝見したいものですが。女神の毛とやらを」
 搾り出すように上げたヌエトの呟きは、背後の男の下衆な声にかき消された。
「そうね……でも、そろそろ本来の仕事に戻らなければ」
「はあ」
 耐え難いやりとりは、ようやく終わるようだった。一緒に行動してきた難民達や、
息子信じたであろうこの谷の指導者を、ヌエトは信じきろうとした。
「怪しいものは、調べなきゃ」
「そうですね」
 裸のまま身体検査を受ければ、終わるはずだったのだ。

166 名前: タイトル考案中 仮D [sage] 投稿日: 2006/07/17(月) 00:03:46 ID:BIWvgpyD
「じゃあ始めて、ザッラ。見るだけじゃなく、奥までちゃんと探るのよ」
「いつも通りに、ですね」
 言葉の意味を理解する間を、ヌエトは与えられなかった。そして次の瞬間、
嫌というほど思い知らされる。
「ひ、いいいいっ!」
 男の指は無遠慮に、あの恥辱の場所であった叢に侵入して来た。そして、
なんら躊躇せず、そのまま。
「いや、あああっ……やめてええっ!」
 どの指かさえ分からぬほど素早く、ザッラと呼ばれている男はヌエトの
奥の穴を穿った。的確で迅速。だがもちろん、ヌエトが賞賛するはずもない。
「やめ……あひいいっ!そんな、ああっ!」
 大事な場所に沸くおぞましいほどの違和感。全身を必死に捩り抗おうとするが、
挿し入れられていないほうの男の手は、たった1本でしっかりと美熟女の腰を
抱き込んでいる。
「どう?武器か何か隠してあって?」
「ううむ……まだ入り口なのでよく分かりませんな。もっと奥のほうを調べねば」
 言葉以上の圧迫感が、ヌエトの下半身を炙る。まるでぎりぎりと音がするかの
ように、ザッラの太い指は女の中を乱暴に突き進む。神の名を心中で必死に
唱える事でしか、その痛みを耐える術はない。
511 名前: 谷の村 ◆5gtXLdp1Yk [sage] 投稿日: 2006/08/29(火) 04:42:51 ID:1ltj7JJl
「ここか、それともここか?」
「あうう、ひいいっ!」
「ふうむ、それともここか……?」
「あひ、はひいいっ!後生だから、やめて、ええ……っ!」
 美熟女の叫びなどまるで気にせずに、節くれ立った指が女の奥を前後する。
乱暴ではあるが、本当に『探る』ように丹念に粘膜を擦りたてる。それが
愛の営みで行われている行為ならば、穿たれているヌエトは遠慮なく股間を
潤わせ濡れた声を上げていただろう。夫に先立たれてからずっと1人だった
肉体は、それほどまでに飢え乾いていた。
 それをかろうじて耐えられたのは、先程より心の中で唱え続けている言葉だった。
信じる神の名前だったはずのその言葉はいつの間にか死んだ夫の名前になり、
そして今は息子であるエムゥの名になっていた。
「……ダマイさま。指で探ってみましたが、どうやらこの女は怪しいものを持っていないようです」
 長い時間ヌエトの内部を蹂躙し続けた指は、その言葉で静止した。しかしまだ、
虚しく荒い息を吐き続けるヌエトの中から抜け出るそぶりはない。ザッラは
ダマイと呼んだ女指導者の顔色を伺い、ヌエトはもはやその女の顔を見る力さえ
失っていた。
「そう。何もなかったのね。じゃあ指を抜いてあげなさい」
「はあ」

512 名前: 谷の村  ◆5gtXLdp1Yk [sage] 投稿日: 2006/08/29(火) 04:46:35 ID:1ltj7JJl
 ずる、ずるるっ。
「くうっ、うう、ううううっ」
 入る時はあれほど鋭く侵入して来たザッラの指は、今度は女の屈辱を煽るように
ゆっくりと引き抜かれていく。
 そして。
 自分の股間から抜かれたその指先は、濡れていた。それをまた女に悟られ
嘲られたら、ヌエトは舌を噛んで死ななければならなかった。
「ごめんなさいね、エムゥのお母さま。こうでもして調べないとこの村は危険なの。敵が多くてね」
 近づき、膝をつき、息がかかるほどの距離でヌエトの顔を見つめるダマイ。
しかしもちろんダマイには、言葉も返せないしあらぬ熱に紅潮した顔を向けることも
できない。だがどうやら、これで本当に解放されるようだった。どうやら、
これでやっと息子に会えるようだった。
「あ、でも」
 耳のそばで聞こえた言葉。涼しい風が吹きかけたヌエトの心は一瞬にして
闇に堕ちる。

513 名前: 谷の村  ◆5gtXLdp1Yk [sage] 投稿日: 2006/08/29(火) 04:49:55 ID:1ltj7JJl
「西の国のある皇帝は、権力を得ようとした母親に色を仕掛けられ、膣の奥の毒針で殺されたと聞くわ」
「そういう話もありましたな」
「ええ、だから……調べなさいザッラ。夫であり師であるデトバに色仕掛けされては大変よ。あなたは、人身御供になりなさいな」
「仕方ありません。教団のためです」
「指が届かない場所でも、調べる方法があるでしょ?」
「ええ」
 絶望に彩られた瞳を、ヌエトはゆっくり上に向ける。
自分のすぐ前に立つ大男。すでに外された衣服。露わになった下半身。指よりも
ずっとずっと醜悪で、自分に向けられ脈打つ、兇器。
「そ、それだけは……いやっ」
 かろうじて搾り出した、声にならない声。しかしもう、男は何も言わず
ヌエトの裸に相対した。
「素晴らしいわザッラ。その逞しい物でエムゥのお母さまの中に入るのね。もし毒薬が仕込まれていても、素晴らしい殉教者として讃えられるわ」
 少し上ずったダマイの声。女がこの状況に興奮しているのを悟らせる。
しかし、ヌエトにはもはやそれすら意味のないことだった。
 両足を掴まれる
 腰を力なく捩じらせる。
 でも近づく。
 触れる。
 刺さる。
「あ、お、お、おお、ううううう……っ!」
 押し出されるような、鈍く重い呻き。無理矢理潤わされた肉洞であっても、
ザッラの物はヌエトを押し拡げ、裂き、突き進んでいく。呻く以外に、
何もできない。

519 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/25(水) 21:53:01 ID:UlYNLCEm
作者の妹ですが、お兄ちゃんをいじめないでください!
520 名前: 谷の村 ◆5gtXLdp1Yk [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 01:19:58 ID:ip2UW1/k
「どうなの?ザッラ。毛むくじゃらの穴の奥に、毒針は見つかって?」
「ううむ……まだ入り口でそれはなんとも。しかし、指とは違ってなかなか探りにくいですな、思ったよりきついようですし」
「そう?あんまり使っていなくて蜘蛛の巣でも張っているんじゃないの?あはははっ!」

 余りに辛らつな嘲りの言葉。長い間、男を受け入れていなかったのは事実だが、
それを恥じる以上にザッラに押し拡げられる膣口の痛みが激しい。
心の中で唱え続ける息子の名も、自らが図らずも上げる鈍い呻きに掻き消される寸前だ。

「う、うぐうう……っ、ん、んんっ!」

 また進む。兇器を繰り出している目の前の男は、ヌエトの表情を眺めながらニヤニヤと笑っている。
そばの女も、苦痛を纏った吐息を浴びるほど近くでヌエトの苦悶を楽しんでいる。

「毒針は?」
「まだわかりません」
「そう」

 長大とはいえ、その長さは無限でないはずなのに、抉痛は永遠のように続く。
貫かれる相手を煽るために敢えて抑えられた会話も、毒を与える呪文のようにヌエトの肉体を蝕んでいた。

「奥が深いわね。毒針はともかく、エムゥが生まれた穴は男を咥え込んで離さない穴だってことかしら」
「そのようですな。確かに逆進を許さないほど固い。しかし……おお、辿り付きました。女の穴の、奥底に」

 男は、ザッラはそれまで浮かべていた冷笑を一度止め、深く歎息した。
何かを味わうように、深く、深く。

521 名前: 谷の村 ◆5gtXLdp1Yk [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 01:22:10 ID:ip2UW1/k
「……ザッラ、針はなかったのね?」
「どうやら」
「そう。じゃあ、抜いてあげなきゃね」
「いえ、しかし……」

 無理矢理抉じ開けた熟れた穴を静かに味わっていたザッラの口元に、
またあの冷たい笑みが浮かぶ。そして。

「相打ちを狙い、穴の壁に毒が塗られているかもしれません。残さぬよう、動いて拭かねば」
「あ、ひ、ひいいいいいいっ……!」

 低く呻く事さえできぬようになっていたヌエトの赤い唇から、破瓜を迎えた乙女の如き叫びが上がった。
女の穴を深くえぐったザッラの兇器が突然引かれ、再びすぐに奥底を激しく穿った。
そしてその動きは往復となり、連続となる。

「あひ、あぐっ、ううっ……あう、あうっ、あぎ、いいいい……っ!」

 あらぬ液に潤ってはいる。しかし自分の躰を内部から突き破らんとする熱杭に対しては、
その潤いなど意味を持たなかった。がくがくと痛みと共に揺さぶられ、
音にさえならない悲痛な呻きを上げるのみの、ヌエトの肉。
 心の中で縋っていた、祈りにも似た息子の名の連呼はすでに霧散した。
陵辱の黒い闇や、理性を押し流された後に浮かぶであろう認めたくない本能に、
わずかに抗った母性が唯一紡いだのは、幼き日の息子の、笑顔。

522 名前: 谷の村 ◆5gtXLdp1Yk [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 01:23:46 ID:ip2UW1/k
 そこは、まさに闇だった。灯りを用意する余裕などなかったが、
わずかな灯りがあったとしてもこの岩の洞穴は、それを呑み込んでいただろう。
 希望など見つけ出せぬ、闇。戦火に追われ行き倒れ死を覚悟したときに感じた絶望と、
それは等価だった。
 しかし、エムゥは進む。今はただただ冷たい岩の感触しか感じ得ないてのひらに、
再び母親の温もりを受け止めるために。

「……っ!」

 何かが、聞こえた。細かく織られた布を裂くような、音。
正体が分かったわけでもないのに、その音はエムゥの身を鋭く切った。
その高い音は、まるで誰かの声のように。
 進むしかないはずの足が、止まる。そして再びの、無音。
 すぐに、別の音。声。
 この村に住む者なら誰でもすぐに理解できる声。
無限に続く穴の奥から低く静かに響いて来るのは、教師デトバの祈りの声だった。
しかし、普段ならひれ伏し喜びを得ようとするであろうそれに、今のエムゥは、確かな恐怖を感じた。


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