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291 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/07/29(土) 12:41:36 ID:SLCmV2r1
1)
 慶太の母が居間に駆け込んで来た。
 彼女は慶太の手を掴むと、急いで隣の部屋の押入れの前に連れていった。
「中に入って!」
 慶太はどうしたのだろうと訝ったが、母のただならぬ雰囲気に素直に中に入った。
「絶対に出てきては駄目よ。出てきてもいいってお母さんが言うまで、何があっても絶対に出てきては駄目よ。わかった?」
 切羽詰まった母の様子を見て、慶太は頷いた。
 押入れの襖が閉められると、一面真っ暗となった。
 慶太の母は玄関の方に走っていったようだ。
 すると玄関の方で男たちの怒号が飛んだ。
 ドカドカと部屋の中に入ってくる音が聞こえる。
 息子はいませんからと悲鳴にも似た母の声がその後を追ってくる。
 慶太は恐怖に身を凍らせた。
 男たちの気配が押入れの前を行ったり来たりする。慶太は息を潜めて見つからないことを祈った。
 乱暴に襖を開ける音が左右で響く。
「どこに隠した!」男の一人が怒鳴りつけた。
 押入れの中で一人、慶太は震えていた。
「本当にいないんです!」男の動きを追うようにして母が叫んでいた。

292 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/07/29(土) 12:42:09 ID:SLCmV2r1
2)
 男たちの気配が遠のいて、慶太は張り詰めた恐怖感から幾分開放された。
 しだいに慶太は母のことが心配になってきた。
 その懸念は的中した。
 襖を通して、一瞬母の潜もった声が聞こえたかと思うと、衣服の引きちぎられる音がした。
 その後は母が声を出すことはなく、ただ衣服のこすれ合う音が聞こえてくるだけだ。
 裸にされているのだと慶太は思った。
 胸の鼓動が高鳴った。
 母の嗚咽と思われる音が時折発せられる。男たちの下卑た笑いも聞こえてくる。
 どのくらいの時間が経ったのか、気がつくと男たちは家から出て行ったようだった。
 母が玄関の方から近づいて来るのがわかる。
「怖かったでしょう。もう出てきても大丈夫よ」母が慶太に呼びかけている。
 母が服を着た様子はない。慶太は押入れから出ることができなかった。
 いきなり押入れの襖が開かれた。光で一面が真っ白になる。
 母の裸を見たくないと慶太は思った。
 強い光の向こうに母の姿があった。
 母は下着姿だった。裸でなかったことに慶太は少し安堵した。
「ごめんね、怖かったでしょう。本当にごめんね。もう大丈夫だからね」母は慶太を強く抱きしめた。
 母は裸にされていたのだろうか。その疑念が慶太を苦しめ続けた。




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